となりの専務さん
「いえ、とんでもないです。お加減はいかがですか」

「え、ああ……出すもの全部出して薬ももらったんでね。だいぶ楽になりましたけどね」

「それはよかったです。慌てて来たので手土産もないうえに、急に上がりこんでしまって申しわけありません。今晩はゆっくりお休みになられてください」

「は、はふ……」

はふってなんだ、お父さん。
突然の彼氏の登場に驚く、というよりは、私がこんなにしっかりしてる人と付き合ってることに驚いてるんだろうな。前の彼氏があんな感じだったしな。


次に口を開いたのはおばあちゃんだった。

「ヒロちゃん、今日は泊まっていくでしょ? もうこんな時間だし、明日は土曜日だし」

おばあちゃんはそう言ってくれたけど。

「ううん。帰るよ。お父さんも平気そうだし。彼もいっしょだし」

自分ひとりだったら泊まったかもしれないけど、専務もいっしょだからさすがに帰らないと。夜行バスまだあるし。

でも。

「そんなこと言わずに、涼太くんといっしょに泊まっていきなさいよ」

「え?」

「お客さん用のお布団ならあるわよ? 客室で寝てもらえばいいわ」

「え、え」

するとおじいちゃんも。

「ならワシが布団を用意しよう」

と言って、スッと立ち上がる。おじいちゃんは昔からなにかと行動が早い。


あれよあれよという間にお布団の用意やらなにやらが完了し、私と専務は順番にお風呂を借りた。
そして、いろんな疲れもあったのですぐに寝ることにした。ちなみに、専務は客室、私はお姉ちゃんといっしょに居間で寝ることになった。
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