となりの専務さん
「私は商品企画部の、月野 璃恵(つきの りえ)、入社五年目です。
一応、君たちの教育係ってことになってるから、わからないことがあったらなんでも聞いてください」
入社式を行なった部屋を出て、商品企画部へ向かう途中の廊下を歩きながら、私と大樹くんを迎えに来てくれたその先輩ーー月野さんはそう言った。
すごく美人な方で、スタイルもよかった。
パーマのかかった茶髪の長いヘアーがふわふわと揺れていて、ほのかに甘い香りもした。
歩き方もキレイで、服もオシャレで、モデルさんみたいに素敵な方だなと思った。
「あ、じゃあさっそく質問してもいいですか?」
私のとなりを歩く大樹くんが、右手を顔の横でピッと挙げながら月野さんにそう聞いた。
月野さんが顔だけこっちに向けながら、「ええ、もちろんよ。なに?」と笑顔で答えると、大樹くんは。
「俺タバコ吸うんですけど、喫煙所とかってありますか?」
「え、ええ。商品企画部からだと、四階の喫煙所が一番近いわ。あとは二階にも喫煙所があるけど、それ以外の場所は禁煙だから、絶対に吸わないでね」
「はい。あ。あと、残業代とかってつきますか? あんまりタダ働きしたくないので」
「だ、大丈夫よ。残業代の申請書の書き方もあとでちゃんと教えるわね」
「あとは……あ、休日出勤とかって結構ありますか? 土日はゆっくり休みたいので、あんまり出勤したくはないんですが」
「……仕事の進行状況にもよるけど、なるべくないといいわよね……」
大樹くんに対し、月野さんがだいぶひきつってる。怒ってるのかな。となりを歩く私もなんだか恥ずかしい。
……でも今の私には、大樹くんのそんなとんでも発言をどうこうフォローする余裕がない……。
今の私の頭の中は、アパートのとなりの響さん=専務のことでいっぱいで……。
一応、君たちの教育係ってことになってるから、わからないことがあったらなんでも聞いてください」
入社式を行なった部屋を出て、商品企画部へ向かう途中の廊下を歩きながら、私と大樹くんを迎えに来てくれたその先輩ーー月野さんはそう言った。
すごく美人な方で、スタイルもよかった。
パーマのかかった茶髪の長いヘアーがふわふわと揺れていて、ほのかに甘い香りもした。
歩き方もキレイで、服もオシャレで、モデルさんみたいに素敵な方だなと思った。
「あ、じゃあさっそく質問してもいいですか?」
私のとなりを歩く大樹くんが、右手を顔の横でピッと挙げながら月野さんにそう聞いた。
月野さんが顔だけこっちに向けながら、「ええ、もちろんよ。なに?」と笑顔で答えると、大樹くんは。
「俺タバコ吸うんですけど、喫煙所とかってありますか?」
「え、ええ。商品企画部からだと、四階の喫煙所が一番近いわ。あとは二階にも喫煙所があるけど、それ以外の場所は禁煙だから、絶対に吸わないでね」
「はい。あ。あと、残業代とかってつきますか? あんまりタダ働きしたくないので」
「だ、大丈夫よ。残業代の申請書の書き方もあとでちゃんと教えるわね」
「あとは……あ、休日出勤とかって結構ありますか? 土日はゆっくり休みたいので、あんまり出勤したくはないんですが」
「……仕事の進行状況にもよるけど、なるべくないといいわよね……」
大樹くんに対し、月野さんがだいぶひきつってる。怒ってるのかな。となりを歩く私もなんだか恥ずかしい。
……でも今の私には、大樹くんのそんなとんでも発言をどうこうフォローする余裕がない……。
今の私の頭の中は、アパートのとなりの響さん=専務のことでいっぱいで……。