となりの専務さん
「はい、なんですか?」

私がそう聞き返すと。


「気を悪くしたら申しわけないんだけど、なんかさぁ、服ダサくない?」

「え……?」

「うち化粧品会社だしさ、もう少しキレイなカッコした方がよくない? その服、絶対安ものでしょ?」

「え、あ、は、はい……」

……オシャレには正直無頓着で、元々あまり服は持ってない。
それでも、会社は制服じゃなくて私服だから、本当は就職前にもっといい服を買いたいとも思っていたけど……お金もなくて、それはできなかった。


すると今度は鹿野さんが。

「あとさぁ、その髪」

「え?」

「広香ちゃん、顔が幼いから、その真っ黒い髪をうしろでひとつに束ねただけだと、中学生みたいだよ」

「あ……私くせっ毛で、おろしてるとだんだん広がってきちゃうのでどうしても縛りたくて……」

「そんなの美容院行ってケアしてもらえばよくない? 染めてもないし、パーマもかかってないし。っていうか、今時の中学生の方がまだオシャレかも」

鹿野さんがそう答えると、鹿野さんと月野さんはふたりでクスクス笑った。



あ……私、悪意向けられてる?



「あ、嫌味言ってるわけじゃないからね?」

「そうそう、アドバイスだから」


ふたりにそう言われ、私は



「……は、はい。ありがとうございます」

と、答えるしかなかった……。
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