となりの専務さん
とりあえず、専務にはテーブルの前に座ってもらった。


私は台所にケーキを持っていき、ケーキの箱をパコッと開けてみる。

「わあ、すごい」

箱の中には、見たことのないくらいのキラキラしたかわいいケーキが三つ入っていた。


「専務、ケーキ三つ入っていますけど、私がふたついただいてもいいということでしょうか」

お皿の用意をしながら、台所から部屋にいる専務にそう尋ねると。


「え? 石川さんが三つ食べればいいじゃん」

「え⁉︎ そそそういうわけには……!」

私が慌てて否定すると、専務は続ける。


「俺はこれからもやしをいただくからケーキはいいよ。ていうかそもそも甘いものそんなに好きじゃないし」

「そ、そうですか……?」

…….好きじゃないから、と言われると、それ以上はなにも言えなくなる。

でも、こんなにおいしそうなかわいいケーキ(しかも三つ)と、私が作ったもやし炒めの残りものを交換するなんて、まるで詐欺にもほどがある気がした。



とりあえず、箱の真ん中に入っていたチョコケーキと、さっきのもやし炒めの余りをそれぞれお皿に取り、私は部屋に運んだ。



「お口に合えばよろしいのですが……」

たかがもやしを炒めただけで、たいした工夫もしてない料理なのに、逆に随分偉そうなことを言ってしまったかもしれない、と言った直後に感じた。



でも、それを食べた専務は。

「うまい!」
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