ワケあり荘のイケメンズ!
「くぅーん」
ワケあり荘に行き、玄関の前に立ち止まると、突然犬の鳴き声が聞こえた。
なにごとかと思い、その鳴き声が聞こえた方へ向かうと……庭に犬がいた。
中くらいの白い柴犬だと思われる。
「って、なんで!?」
ワケあり荘に犬がいるなんて、聞いてないんだけど!
だってここは、今日からあたしと真守が住む予定のはずで、誰も住んでないんだから。
いくつか空き室があるけど、あたし達はその一室を使わせてもらうことになっている。
……他の部屋に住み着いてたとか?
いやいやまさか、ネズミじゃあるまいし。
自問自答して首を横に振った。
つぶらな瞳がウルウルとあたしを見つめている。
野良犬にしてはきれいな毛並み。ちゃんと手入れされてるんだろうなってことがわかる。
まさか、捨て犬?
あたしはそっとしゃがみこんで、その犬の頭を撫でた。
「いい子だね」
賢いワンちゃんだ。人間に慣れているのか、おとなしい。
それどころか、甘えるようにあたしの手に頭をなすりつけてきた。