ワケあり荘のイケメンズ!



「消してください、今すぐに」


「なんでだよ」


「そういうの、盗撮って言うんですよ」


「…………。違う。俺はお前じゃなくて、お前の隣にいる犬を撮った」


「あの、目をそらして言われても説得力ないんですが」


とにかく、いち早くその立派なカメラからあたしの写真を消してほしい。


よく見れば、そのカメラは一眼レフで、最近主流のデジカメとは違う、高価なものなのだと見てわかった。



「カメラ嫌いなんです。だから消して」


「…………」



男は一瞬、黙った。



あ……またやってしまった。


どうも写真の類の話になると、父親を思い出して冷静ではいられなくなる。


嫌い……なんて、そんな言葉、本当は言うつもりなかったのに。



すると男は、瞬時にカメラを構えた。


パシャリ……と、なめらかに流れる動作のようにレンズ越しにあたしを見つめて、再びシャッターを押した。



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