エリート上司と秘密の恋人契約
仕方がないと思うけど、一緒に過ごす時間が減ってしまうのが悲しい。


「終わったら急いで帰るよ。で、美弥の家に行く」


「うちに?」


「うん、泊めて」


和真は1度も私の部屋に入ったことがなかった。車で送ってくれてはいたから、ときどき「あがる?」と聞いたりもした。

でも、「すぐ帰るから」と断られて1度もあがったことはない。

それなのに今さら泊まるなんて……1週間後に別れるのに、和真がいたという形跡を残されるのは困る。

何か物を残すことはないだろうけど、ここにいたなとかここで笑っていたなとか、思い出してしまう場面が出てくるに違いない。

きっと和真がいたという形跡を探してしまう。

そして、いないという現実に戻されて寂しくなり、苦しくなる。


「美弥? ダメ? ダメなら明日は一緒にいられないけど」


一緒にいられないのは嫌だ。貴重な時間を無駄にしたくない。


「いいよ。待ってる」


「うん」
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