エリート上司と秘密の恋人契約
聞き分けのよい振りをする。私は聞き分けがよいから別れる時も揉めることなく別れられる。

今まで付き合った人ともそうだった。

「別れよう」「うん、いいよ」と理由を問い詰めることなくあっさりと別れてきた。

今回はもっとあっさりしているのかも。最初から別れると言われてるのだから。

受け入れなくなくても、それを言えずにいる。


和真は非常階段を上って、上の階から戻るという。私はここから出る。


「じゃ、明日」と背中を向けた和真を見て寂しくなり、思わず後ろから抱き締めてしまった。


「美弥?」


「あ、ご、ごめんなさい!」


何をしているんだろう……こんなところを誰かに見られたら大変。


「和真……」


私が慌てて離れたのに、今度は和真が正面から抱き締めてきた。和真の胸に顔を埋めると、安心できる香りに包まれる。


「顔をあげて」


「え……んっ!」


顔をあげた瞬間、キスをされる。

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