エリート上司と秘密の恋人契約
タクシーが走り出したところで私はホッと胸を撫で下ろす。乗ってしまえばもうこっちのものだ。

もう大丈夫。和真は私が連れて帰る。他の誰にも渡さない。


「美弥?」


「えっ?」


「ははっ! 美弥だ。すごいな。迎えに来てくれたの? で、この格好はなに?」


私のメガネと帽子を外して、和真は笑う。


「だって、和真がお持ち帰りされちゃうと思って……」


マスクは自分で外す。


「心配してくれたんだ。ありがとう」


和真は私の肩を優しく抱いた。

あれ? 酔っている人にしては目つきがしっかりしている。

アルコールの香りは漂ってくるが、べろんべろんには見えない。

もしかして、酔っていない?


「和真、大丈夫? 酔っていないの?」


「うん。まあ、まとわりつかれて困ったけど、最後には強く言って一人で帰るつもりだったし。さすがに女の子にお持ち帰りはされないようにはするよ」


「そ、そうだよね。あはは……」
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