エリート上司と秘密の恋人契約
和真は発つ前日、広報部にも挨拶に来た。

部長が「頑張ってこいよ」と労う。


「本間と星川さん」


「諸橋くん、気をつけて行ってきてね。それはそうと、この前諸橋くんを連れ去ったマスクの女って、誰はの? そんな人がいるなんて知らなかったわー」


月曜日に出勤すると送別会の帰りにマスクをした女が現れて和真を連れ去ったと噂になっていた。

私はさやかさんから聞かされたのだけど、ばれてはいなかったのかとドキドキした。あとで大胆な行動をしてしまったと反省した。

反省する私に和真は「意外に無鉄砲なんだな」と笑った。


「誰だかは想像に任せるよ。二人も元気でね」


「やっぱり諸橋くんは余裕よねー。明日は会社に来ないで、あっちに行くんでしょ?」


「うん。来年の春には戻る予定だから、そのときはまたよろしく」


「がんばってください」


「うん」


他人行儀なことしか言えない。明日が最後だ。しばらく和真の姿を見ることが出来ないのが寂しい。
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