エリート上司と秘密の恋人契約
それよりももっと寂しいのが別れなければならないこと。

期限は最初から4月10日までと決まっていた。私もそれを承知の上で付き合うことを了解した。

その時はまさかこんなにも好きになるとは思わなかったから。たったの1ヶ月とはいえ、簡単に了解した自分に後悔する。

こんな思いをするなら付き合わなければよかった……。


4月10日。とうとうやって来た別れの日。

私は午前中で早退をして和真の家に行った。


「荷物はそれだけ?」


「うん。あとは送ったし、向こうで買えばいいしね」


持っていく荷物は洋服くらいの身の回り品だけで少ない。1年後には戻るから、ここの物はほとんど置いていくらしい。

和真がいない間、この部屋はどうするのかと聞いたら、お兄さんに1ヶ月に1度空気の入れ換えをしてもらうよう頼んであるという。

私は出発の準備がいつの間にか進められていて、いろいろな手続きも済んでいたことさえ知らされていなかった。
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