エリート上司と秘密の恋人契約
聞かなければきっと和真は言わなかった。

私には関係のないことなのかな。和真は別れる私にこれは言う必要がないと線引きをしているのかもしれない。

知らされないのも頼られないのも寂しい。明日から私たちはなんの関係がなくなると言われているようで寂しい。


それでも私は成田空港に着くまで明るく振る舞った。

ニューヨーク行きの飛行機は夜の7時半に出発予定。

空港に着いて、チェックインを済ませ、セキュリティチェックへと向かう。ここから先に私は入れない。ここでお別れだ。

まだ搭乗開始まで時間があるからと近くの椅子に並んで座った。何も話さないでただ座った。

何を話したらいいのか分からなかった。


搭乗開始を知らせるアナウンスが流れ、和真が立ち上がったので、私もつられるように立って向き合う。


「短い間だったけど、ありがとう」


「うん……」


和真の顔を真っ直ぐに見たら涙がこぼれそうになるから、私は床を見ていた。

涙は見せれない。

困らせることは出来ない。
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