エリート上司と秘密の恋人契約
二人は私を置いて、どんどん話を進めていく。その時、数人の社員がコンビニ袋を下げて、フロアに戻ってきた。さやかさんは他の人に聞かれまいと小沢に顔を近づけるように手招きする。

私もつられて近寄る。


「愛しいものを見る顔よ。美弥のことが好きなんだなと思った」


それだけでは私たちが付き合っていたかどうかは分からないはずだ。それに、あの時の和真は普通だったと思う。

たった1ヶ月だから周りには知られないように過ごしてきたつもりだ、ばれたら困るわけではないけど、後々のことを考えると知られたくはない。

和真に迷惑を掛けるようなことはしたくない。

でも、もうこの二人には嘘がつけないかも。架空の恋人に振られたと言っても、さやかさんはきっと信じない。

その相手を突き止めようとする。


「星川。もしあの人と付き合っていたというなら、なんで別れたんだよ?」


架空の恋人はもう和真と特定されてしまったようだ。

なんで別れた?

話したくはないけど、騙していたという後ろめたさがあり、正直に言おうと腹をくくる。
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