エリート上司と秘密の恋人契約
私たちのやり取りを見ていたさやかさんが笑う。


「小沢くん。惚れたほうが負けなのよ。美弥には敵わないわよ」


「はあ」とため息をついた小沢は残りのサンドイッチを口に加えて、出て行った。午後から外出する予定だからのんびりはしていられないらしい。

時間がないなら、わざわざここに来なくてもいいのに。


「小沢くんもいい男だから、小沢くんにしたら? なんて言いたいけど、美弥の気持ちは諸橋くんにしか向いてないものね。でも、ほんとあの人は何を考えているのかしらねー」


小沢がいい男だというのは私にも分かる。でも、さやかさんが言うとおり、和真しか見えないし、和真しか欲しくない。

和真が考えていることは謎だけど、自分の気持ちに偽りたくはない。

先のことは分からなくても、和真が戻ってくるまでは想っていたい。

この想いが届くかどうかはもちろん分からないけど、伝えることに意味があると思いたい。


* * *


一人ぼっちの寂しいクリスマスが終わり、年末年始に帰った実家では「そろそろ結婚する相手を真剣に探しなさいよ」と親に言われた。
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