エリート上司と秘密の恋人契約
「なあ、大丈夫か? そういえば、諸橋さんとどうなっているんだよ? あの女、なんだよ?」


「小沢、ごめん。頭痛いから帰りたいんだ」


小沢の問いかけに何も答えられない。だって、私も知らないし。何も知らされていない。

小沢は顔色の悪い私を駅まで送ると言ってくれたけど、断った。駅のホームにある椅子に座って、顔を両手で覆った。何も考えたくない。

もう確認もしなくていい。

和真なんて知らない。和真なんて嫌い。

嫌いだから、もう考えない。

和真を自分の中から追い出そうと必死になった。

そんなとき……


「美弥!」


息を切らせた和真が私の前に立つ。

和真は切羽詰まった表情を見せた。

何で考えないようにしているのに現れるの……。


「何で、ここに来たの?」


「小沢に聞いた。具合が悪いんだって? 大丈夫か? 車で送るから会社に戻ろう」


和真は私の隣に座って、抱えるように肩を抱いた。

密着されたことで、好きな和真の香りが漂ってくる。

違う……もう好きじゃない、嫌いな香りだ。
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