エリート上司と秘密の恋人契約
「嫌、電車で帰る」


「いいから、立って。送るから」


「良くない。何で私に優しくするの? 私なんかを送ったら、サラさんに怒られるよ。離して」


肩に乗っている和真の腕を離そうと掴む。しかし、和真は抱く手を強めて、私を自分の元へと引き寄せる。


「美弥、聞いて。俺はサラと付き合っていない。俺とサラは何の関係もない。だって、俺は美弥が……」


「嫌! 聞かない! 何も聞きたくない」


私は咄嗟に両手で耳を押さえた。そのとき、ホームに電車が入ってきたのが見えたので、立ち上がる。

乗らなくちゃ。


「電車で帰る。一人で大丈夫だから」


「待って」


和真の制止を振り払って、電車に乗り込んだ。動き出したとき、呆然と立ちすくむ和真と目が合ったけど、逸らした。

服で隠れて誰にも気付かれないネックレスに手で触れる

永遠の輝きを放つこのダイヤに込められた意味は、別れだったのかもしれない。

涙が一筋頬を伝う。

泣くものか。
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