エリート上司と秘密の恋人契約
「はあ、助かった。黒坂部長、ありがとうございます」


「今日は諸橋が払えよ」


「もちろんです。あ、本間、おめでとう。結婚式はいつ?」


「ありがとう。六月の予定なの」


「ジューンブライドか。いいね!」


和やかな空気の中でおめでたい会話が弾んでいたけど、私はその中に入れないでいた。

ビールが運ばれてきて、乾杯はしたものの全然減らない。和真の前に座って、何をしたらいいか分からなかった。

ものすごく居心地が良くない。さやかさんをお祝いしたいという気持ちはあるのに盛り上がれない。


「しかし、五年間も遠距離恋愛するとはすごいね。本間さん、よく頑張れたねー」


「フフッ。しっかりとした愛がありましたから」


「なるほど。ねえ、星川さんは遠距離恋愛を出来るタイプ?」


「はい?」


いきなり話を振られて、俯き加減だった顔を上げる。

出来るタイプと出来ないタイプ?

実は遠距離恋愛をしたことがあった。

でも、その恋愛は失敗に終わっている。


「美弥は遠距離恋愛を絶対しないんだよな?」


「えっ?」
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