エリート上司と秘密の恋人契約
「あの子と付き合ってもいないし、何もしていないんだったらもう言うことはないですね。あ、これ、美味しいですね！」


さやかさんはガーリック味の焼いた手羽先を美味しそうに食べる。そんな様子を見て、黒坂さんも手羽先を手に取る。


「まあ、確かに周りが口出しすることじゃないな。とりあえず食べて、飲もう。諸橋の金だし、じゃんじゃん飲もう。すいませーん、お代わりください」


黒坂さんは三人分の生ビールと唐揚げを追加オーダーした。黒坂さんはとにかく肉料理ばかりを頼むから、さやかさんが「バランスがよくない」とサラダも頼んだ。

車通勤の和真だけが烏龍茶を飲んでいる。一人素面の和真はどことなく思い詰めたような顔をしている。

そんな和真には誰も触れることなく、話はさやかさんの結婚へと変わった。


「結婚式、どこでやるんですか？ 呼んでくれますよね？」


「美弥、ごめーん。実は家族だけでやることにしたの。ハワイの教会をこの前予約したのよ。フフッ」


「ハワイで挙式か、いいね！」


黒坂さんがポンッと手を叩く。
< 202 / 232 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop