エリート上司と秘密の恋人契約
「へー、立派なダイヤだね。そんなのくれるのは男だろ?」


黒坂さんにも注目されて、私の心は穏やかじゃなくなる。ただ一言「和真がくれた」と言えば良いだけなのに、言葉が出ない。

チラッと和真を見ると目が合う。


「俺があげたんだよ」


白状する和真の言い方は素っ気ない。ただいらないからあげたという感じに聞こえ、そこに特別な意味がないと言われたように感じた。

本当に私は和真に一喜一憂されている。

今は冷たくされたように感じて、心が痛んだ。


「諸橋くんがあげたの? 何よ、すごいじゃないの。こんなのあげるくらい美弥のことを好きなら、もっとしっかりしないと」


「ハハッ。本間さん、良いとこをつくねー。そうそう、ちゃんと言うべきことは言わないとね」


二人に掻き立てられた和真は居心地が悪くなったのか、トイレにと席をはずした。

和真が私に1ヶ月だけの交際を申し込んできたいきさつは分かったけど、今の和真の気持ちが分からない。

「会いたかった」と言ってたけど、社交辞令だったのかな。


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