エリート上司と秘密の恋人契約
「じゃあ、帰るか、美弥、送るよ」


「ううん。まだ電車あるから、電車で帰る」


「俺が送りたいんだ。まだ一緒にいたい。だから、送らせてよ」


真っ直ぐ見つめる瞳に心臓がドキンと跳ねる。

そんなふうに言われたら、断れない。断れないじゃないのよ。


「うん。じゃあ、お願い」


それなのに、私は可愛く答えることが出来なかった。

和真はいろんな意味で私の心を掴んでくる。侮れない。

そして、運転する和真の横顔を心ならずも見てしまう。見るのが癖になっている、

運転中の和真はほとんど横を見ない。話すときもちゃんと前を見ている。よそ見をしない和真の運転は安定していて、安心できる。お互いが無言で、車内が静かでも

でも、何を考えている分からない和真の頭の中を覗きたくなる。

頭の中を覗ける望遠鏡のような物を誰かが発明してくれないだろうか。

本気でそんな夢のまた夢のようなことを考えた。


「美弥」


「なに?」


前を向いたままで私を呼ぶ。
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