エリート上司と秘密の恋人契約
和真と偶然ロビーで会って、伝言を頼まれたというけど、肝心な部分は聞いていないようだ。聞いたとしても和真は何も言わないとは思うけど。


「来週に詳しいことは話しますね」


「楽しみにしてるわ」


伝えられた6時に地下の駐車場に行く。静かな駐車場内に私のヒールの音が響く。

スマホを操作していた和真が顔を窓に目を向けて、私の姿を捉える。

手を小さく振ると振り返してくれる。なんだか恋人同士みたいだな。


「お待たせ。荷物、うしろに置いていい?」


「ああ」


「これからどこに行くの?」


「温泉」


和真の答えが短い。どこの温泉なのよ……。


「どのくらいで着くの?」


「一時間半くらいかな」


「ふうん。温泉、久しぶりだから楽しみだなー」


「うん、俺も」


短くてもちゃんと返事をしてくれる。だから、別に饒舌な和真を望まない。


中央道を走って、途中サービスエリアでカレーライスを食べて、河口湖インターで降りる。どこに行くか教えてもらわなくてもだんだん行き先が見えてきた。
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