エリート上司と秘密の恋人契約
私は浴衣とタオルを抱えて、部屋を出た。大浴場に行くと人はまばらでのびのびと入ることができた。

大きな窓の向こうには富士山が見えると言う。今は真っ暗で何となく言いづらい、シルエットが見えるような、見えないような感じだった。

朝にまた入ろう。

のんびりと入って、部屋に戻ると和真は浴衣を着て、ベッドの上に横たわっていた。


「和真?」


声を掛けるけど、返事がない。近付くと微かに寝息が聞こえてきた。

寝ている……そういえば、前にもこんなことがあった。あれは最初にお泊まりしたときだったな。

あの時も私がお風呂から出たら、和真は寝ていた。


「クスッ。おやすみなさい」


布団を肩までかけてあげて、洋室の灯りを消す。

私は和室に行き、冷蔵庫から缶ビールを取り出してコップに注ぐ。

テーブルの上には和真が飲んだと思われる空になった缶ビールと中が濡れているコップがあった。

疲れたと言っていた。仕事帰りにここまで運転してきてくれたのだから、疲れもするだろう。
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