エリート上司と秘密の恋人契約
キスをしてくれるなら、ずっと丸出しでもいい。でも、おでこよりも口がいいな。

和真の口をじっと眺めた。


「ん? どうした?」


「和真、キスは口にして」


「そんなふうに言われたらたまらない」


和真は軽いリップ音を立てて、キスをしてくれる。

でも、軽いキスだけでは足りない。

もっと濃厚なのが欲しい。


「もっとして」


「だからー、たまらないって言ってるだろ? 煽るなよ。あー、もう散歩はおしまいだ。旅館に戻ろう」


「うん」


周りに歩いている人はいなかったけど、車の通りは多い。和真しか見えなくて忘れていたけど、ここは外だった。

他人に見せる趣味はないし、見られるのは恥ずかしい。

仲良く手を繋いで戻ると仲居さんたちが「おかえりなさい」と出迎えてくれる。

本当にいい旅館だ。


「ねえ、ここ予約するの大変だった?」


多分予約をしたのは数日前。間際でよく取れたなと思っていた。
< 220 / 232 >

この作品をシェア

pagetop