エリート上司と秘密の恋人契約

うわ……確かに濃いからきつそうな顔になっている。これは、大失敗だ。


「星川さん。これから打ち合わせがあるから、この資料を５部作ってくれる？ 星川さんももちろん参加してもらうからよろしくね」


メイクを直してこようと腰を浮かせた時、主任から声が掛かる。

最悪なタイミングに浮かせた腰のままで、動きを一瞬止めてしまった。

主任に「はい」と返事をして、スケジュールをチェックすると打ち合わせは20分後。５部の資料作りにそれほど時間はかからないけど、参加するなら目を通しておく必要がある。

主任の補佐としてこの業務に携わっていたのは、新入社員のだったけど、その社員は昨日から風邪で休んでいる。

昨日の時点ですぐに言ってくれたら良かったのに思うが、愚痴っている暇もない。クライアントが来るまでに動こう。

化粧直しを諦めて、必要資料のあるフォルダを開き、プリントアウトしていく。