エリート上司と秘密の恋人契約
たまたまエレベーターで一緒になったというだけで、声をかけられて今に至るだけなのに。

あ、でも……「好きだから付き合いたい」って、言っていた。

あれは本当なのだろうか。その場しのぎのセリフではないかと本気にしていなかったけど、あれが本気だったとしたら……


「かず、ま」


「ん? ほんとにどうした? 具合でも悪い?」


隣に座った和真の方を向いて、言葉を発するが出てきた声が震えてしまう。具合が悪いのかと心配されるほどのひどい声が出てしまったのは自分でも分かる。

緊張で上擦ってしまっている。軽く深呼吸をして、気持ちを落ち着かせよう。


「ううん。大丈夫だよ。そんなに疲れてもいないし」


「じゃ、なに?」


和真は少し体を動かして距離を縮めてきた。


「あの、今日楽しかった」


「うん、俺も楽しかったよ」


「うん。それでね、ここに来るとは思っていなくて……」


「うん?」


「私、ここにいていいのかなと思って」
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