エリート上司と秘密の恋人契約

小沢はなぜか嬉しそうに笑う。なにやら勘違いしているみたいだけど、その笑顔はかわいくて、今から伝える言葉に良心が痛む。


「小沢、ごめん！　あの、あ、ちょっと待って」


両手を合わせて謝った時、プチバッグに入れていたスマホが鳴ったので、急いで出る。画面には和真と表示されていた。


「はい」


『美弥？　外に出て、右に曲がったところで待っているから』


「うん、分かりました。すぐに行きます」


和真との通話を終えて、もう一度小沢に謝る。


「ごめん。先約があったのを忘れていて。また今度、一緒に食べてくれる？」


「まあ、いいけど、今の誰?　先約って、誰としていたの？」


小沢には今まで割と何でも話してきた。昔の恋愛の話もしたことがある。だから、聞かれて「内緒」とか「言えない」と答えたことはなかった。

でも、今回は言えないし、嘘もつけない。


「あ、あのね、ちょっと人と約束をしていて」


「は？　人なのは当たり前だろ？　誰となんだよ？」