エリート上司と秘密の恋人契約
ドキドキする私の心知らずか、大胆に指まで絡めてくる。心臓が飛び出そうなくらい跳ねた。これではまずい。意識を他に飛ばさないと、顔が赤くなってしまう……。

私は必死でサラダのレタスはどこ産なのかな? と、どうでもいいことを考えた。

そんな私たちの様子を知らないはずの小沢が楽しそうに笑うから、バレたかと冷や汗が出そうになった。


「俺、知っていますよ。諸橋さんの振り台詞。代わりに再現してみましょうか?」


「悪趣味だな」


「フフッ、いいじゃないの。小沢くん、やってみてよ」


さやかさんに加勢された小沢は、和真を演じる気満々で微笑んだが、すぐに表情をなくして冷たい言葉を吐く。


「断る」


「えっ? それだけ?」


吐かれた言葉は短かった。確かに冷たいと言えば冷たい。そこに何の感情も込められていないから。

だけど、そんな短い返事だったとは、思いもしなくて驚く。絡められている指のことを忘れるくらいに。
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