エリート上司と秘密の恋人契約
「それで充分だろ?」


「フフッ。諸橋和真流の簡単で分かりやすくて冷たい振り方よねー」


「何がいけないんだ」と和真はまた不機嫌な声を出す。いけなくはないけど、もう少し違う言い方がなかったのか……。


「あ、小沢はなんて断るの?」


「えっ? 俺?」


他の言い方ってどんなのだろうと思ったら、ついさっき断ってきた小沢が気になった。

和真が冷たいというなら、小沢はどんなふうに言うのだろうか?


「そうよ。小沢くんはなんて言うの? ほら、今なんて言ってきたのよ?」


まさしく小沢にとってはタイムリーだ。しかし、たった今言ってきたことを再現しろと言うのは、酷かもしれない。

総務部の人たちは「次はカラオケ~」と傷心の大塚さんを抱えてつい先ほど出ていったが、さすがに小沢も自分のことになると言いよどむ。


「俺も聞いてみたいね」


そんな小沢に和真までもが追い討ちをかける。絡んでいた手を離して、テーブルの上で頬杖をつく。離れてしまうのはほんの少し寂しくもなったが、ホッとしたのも事実。
< 72 / 232 >

この作品をシェア

pagetop