エリート上司と秘密の恋人契約
夜になるとまだ風が冷たい。襟元から入ってくる風に体が震えたので、羽織ったコートのボタンをとめる。

和真だけが会社のほうに体を向けるが、他の3人は駅へと向ける。結局小沢とは込み入った話が出来なかった。


「星川、ちょっとそこで少し話さない?」


小沢が指差すところは先日和真と行ったカフェ。このまま帰るのでは小沢もスッキリしないのだろう。

私も早々と話しておきたい。架空の恋人のことになるけど。


「うん、いいよ」


「星川さん、待って」


「えっ?」


足を進ませようとしたとき、後ろから和真に腕を掴まれる。


「車で送るよ」


「え? いえ、あの、私はこれから小沢と話があって……」


「ちょっと、諸橋くん。二人の邪魔をしちゃダメよ」


私を引きとめる和真との間にさやかさんが入り、和真の行動を止めようとさらに和真の腕を掴む。

なんだかおかしな図だ。別に揉めているわけではないのだけど、知らない人が見たら揉めていると思われる図かも。
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