エリート上司と秘密の恋人契約
きっと私は無意識に諸橋という名字に憧れている。

現実を見れば、付き合い始めたばかりだけど、別れが近付いていることを実感できているというのに、絶対に来ない未来を夢見てしまう。

過ぎた日々を思い出すと幸せになれるけど、和真がニューヨークへ旅立つ日を思うと、お先真っ暗な気分になる。

しかし、私の気分なんて、今は関係ない。

気持ちをオフィスモードに切り替えて、課長に向き合う。


「すみません、何でしょう?」


「さっきメールを送ったんだけど、添付してあるファイルを開いて確認してくれない?」


「はい。待ってください」


すぐにメールボックスを開く。普段なら朝一番に確認する業務だ。月曜日は土日に出勤してきて、メールを送る人もいるから緊急もあるかもしれないので、真っ先に確認する必要がある。

それなのに私は何もしていなかった。


「あ!」


「ん? 星川さん、どうかした?」


「いえ、何でもありません。今、開くのでもうちょっと待ってください」
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