エリート上司と秘密の恋人契約
「星川さんもやっぱりこの猫の名前が気になる？」


「はい、もちろん」


「ハハッ、もちろんかー。そうだよね。星川さんと同じ名前だものね。気にならないわけないよね。諸橋、堪忍して教えてやれよ」


「今、ここで？」


「そうそう」と楽しそうに笑う黒坂さんはコーヒーを入れるためにキッチンへと行く。

和真に話しやすくするために席を外したのかもしれない。黒坂さんの前では言いにくそうだったから。


「ミヤを拾ったのは１年前なんだ」


１年前……。私は１年前を必死で思い出す。その頃、和真と何かした？

何も出てこない……何もしていない……。


「このミヤに付けた名前は美弥からとったんだよ。美弥と付き合うことになるんだったら、違う名前にしたらよかったな」


和真は照れながら、ミヤを撫でる。

もし私が同じように和真の知らないところで、例えば犬に「カズマ」と名付けていて、それを知られたら恥ずかしくなると思うから照れる気持ちが理解できた。
< 96 / 232 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop