胡蝶の夢
家に帰ってメールを確認した。Amazonの勧誘メールと、もう一件。モナからだった。
「大丈夫?みんな心配してるよ!(・_・;
お大事にね!
今日の肝試しは、勇希くんと、淳君、康介君に一馬くん。女子は良子ちゃんに、春美、心愛と私。
よかったら来る?」
私はすぐさま返信する。
「ありがと!行けたら行くね!」
私はスマホの電源を切って眠りに落ちた。
起きたのは8時頃だった。はっ…!行かなきゃ!行かなきゃダメじゃん!
幸い母は寝室で韓ドラを見ているようだ。あんなのどこが面白いんだか。わっかんないや!兎に角絶対行かなきゃ!
私の倦怠感は既に完治していた。そっと、音を立てないようにドアを開けて、スタートダッシュで飛び出す。
学校まで走って15分!走る、走る。
陸上部なんだ!汗ひとつかくわけがない。
みんなもう来てるかも知んない!行かなきゃ!待たせちゃダメだ!
この角を左に曲がって、信号を渡ってそのまま右!
私の足はどんどん加速していく。
陸上選手にも負けない気がした。
ギネス新記録出せるかも!
その時
かしゃんと音がした。スマートフォンが尻ポケットから落ちてしまった。
まだ買ったばかりなのに!見事なデコレーションがなされている。
私は振り向いた。
そしてスマートフォンに駆け寄る。座り込んで傷が無いか確かめた。よかった傷ついていない!
キキーッ!!
ヤバい!そう思った。一生懸命にかわそうとした。いける。そう思った。
膝を折れば避けられる、そう思った。しかし、握られた足は動かなかった。
握られた…?
「ひっ…ひぃっ!」
そんな馬鹿な!
足輪握るなんて!
私は足を見て、凍りついた。
足が握られている。
目があった。
にぃっ、と笑う。醜い顔が私を見つめて薄ら笑いを浮かべる。
「あっ、ああっ!」
その声を自分で聞いて私の視界は闇に包まれた。