好き以上


螢ちゃんは、2年生の中でも定期テストで上位に食い込むほど頭が良くて、その上生徒会で副会長まで務めるという優等生っぷり。

そして、あの古川先輩と一緒にいたら、女子からの僻みがすごそうという想像は螢ちゃんの場合、当てはまらない。

涼しげな、それでいて薔薇の棘のように冷たい瞳、雪のように白い肌、きゅっと固く結ばれた桜色の唇も、流れるような黒髪に加え、すらっとした手足も、それでいて出てるところは出ているというスタイルの良さ。

どこか人形めいてすらいる、螢ちゃんの容姿と秀才さを掛け合わせれば、ディープな古川先輩ファンも親指を銜えて引き下がるしかないだろう。

それくらい、あの完璧超人の古川先輩の隣に立っていても、つり合うだけの許容を持ち合わせていのだ。


その螢ちゃんが、今、露骨に疲れた顔でいるというのは、結構なレアな状況にある。

なんとなく、理由は想像できるんだけどね。

なにせ、螢ちゃんを困らせるような人は、たった一人しかいないからである。


「もう怒った」


螢ちゃんは、唐突に口を開いた。

「はあ……?」

隣に腰を下ろして、曖昧に返事をした。

普段のキャラはどこへ、と聞いてしまいたくなるほど気を高ぶらせた螢ちゃんがぐるっと私のほうを向くと、すべすべの眉間の間に皺を作って問い詰めてくる。


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