好き以上
「さすがにわたし、怒ってもいいよね」
「う、うん」
「人の気持ちを洗いざらい聞いておきながら、結局は振ったくせに。むしろ告白した以前よりもべたべたしてくるのはどう考えてもおかしいと思わない」
「え、え。え? ちょ、ま。待って、整理させて? え、こ、告白? 告白? 告白ってどうしたのそれ、螢ちゃん告白したの?」
誰に、というのはお察し。おそらく、古川先輩だ。
2人の関係に関して、私もそれほど詳しいわけでもない部外者なので、断定できないけど、たぶん相思相愛なんだと思う。
螢ちゃんのほうはそうだと確定はできないけれど、古川先輩のほうは自信を持って頷ける。
古川先輩は、盲目的なほど、螢ちゃんのことが好きだ。
古川先輩は周りの人よりも数倍も大人びて見えるし、実際に考えていることも幼稚な私なんかよりも数倍、難しいことでいっぱいなのだろう、だからこそ物事を見る瞳もどこか客観的で、他人行儀で、感情に流されることなんてほとんどないように思える。
けれどその古川先輩が唯一、理性的になれない人がいるとしたら──それは確実に、私の目の前にいる、螢ちゃんだけだ。
螢ちゃんには好きな子に悪戯する小学生みたいな意地悪をするし、ものすごく困らせたりするし、返ってくる反応のためにやっているといっても過言じゃない。
その古川先輩が、螢ちゃんを振ったというのも驚きだけど、
「えっと、まず……螢ちゃん……告白したんだよね?」
「うん」
「いつの間に!?」
こくり、平然に頷いた螢ちゃんに驚きの声を上げる。
「つい最近」
「最近!?」
私がのんきにクッキーを作ったりシフォンケーキを作ったり、四苦八苦している間に、古川先輩と螢ちゃんは新たな段階に進んでたの!?
私は混乱する頭を押さえつつ、一番最初に浮かんだ疑問を問いかけた。