好き以上
その痛い沈黙を破ったのは、
「……もういいです」
螢ちゃんだった。
螢ちゃんは諦めに満ちたため息まじりにそう吐き捨てて、自分の首に回った腕をぱぱっと容赦なく叩き落とした。
さっきまでちっとも離そうとしなかった古川先輩が叩き落とされた腕を再び絡めることはなく、あ、まずった、珍しく焦りの表情を浮かべた。
どうやら、螢ちゃんの怒りは古川先輩が抑えられないレベルまで達したらしい。
すく、と立ち上がった螢ちゃんは、後ろを振り返り、まっすぐ古川先輩を見据える。
「そっちがそうやって中途半端なことばかりするっていうなら、わたしも好きにさせてもらいますから」
そう宣言した螢ちゃんの言葉に、まさか私まで巻き込まれるだなんて、誰が想像できただろう。