好き以上
「なんで、」
なんで、真冬くん、美味しいなんて、言ったんだ。
こんな、とても食べられたものじゃないようなクッキーを食べて。
いつもの真冬くんだったら、なんですかこれ、有害物質か何かですか、なんてぐさりと刺さる棘のある一言を突き刺してくるはずなのに。
あんな嬉しそうに、笑っちゃって。
絶対、美味しくないのに。
「……あれ? どしたん、ねーちゃん? 熱でもあるんじゃない、顔真っ赤だけど……」
「うるさい、別に、赤くなんてなってない」
「いや、鏡見てみなって、すごい真っ赤だから」
「ええい! だから赤くないってばっ」
「無理あるとおもうよそれ……」
くそう。
これが、普段遡行の悪い奴が唐突にいいことをするとすごくいい奴に見えてしまうあれなのだろうか。
不覚にも真冬くんに、きゅんとしてしまった自分が腹立たしかった。