ネクタイと指輪【SS】
ネクタイと指輪
「怖いですか、俺が」
真っ暗なオフィスの一画、そこだけが明るく灯るデスク。
世の中は残業撤廃を謳っているというのに、どうしてこんなことになったのか。
そう。入社3年目の後輩と組まされて初めての仕事で、自分の確認不足が要因のひとつとは言っても、こんな初歩的なミスを犯すなんて。
『部下のミスは上司の責任だからな』
帰宅する上司から言われた言葉。そんなことわかってる。
入社8年目に突入し、そこそこ責任のある仕事を任されるようになってきたところで。
悔しくて情けなくて、自分の判断で残業を決めた。
相棒と呼ばなければいけないそいつは向かい合うデスクで黙々と作業をしていたはずなのに、口を開いたと思えばこれだ。
呆れて言葉も出ないという事をアピールするために、パソコンに向かい直し無言で作業を続ける。
カタ、という音がして、背後に気配を感じた。
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