ネクタイと指輪【SS】

「ちゃんと俺を見てください」
「………」
「見てください、先輩」

 睨みつけたはずの私の目を見て、片眉をあげて笑う。

「そんなんじゃ全然ダメ」

 そう言うと、握った右手はそのままに左手で顎を捉えられた。

「誘ってるとしか思われませんよ。先輩」

 顔が近づく。
 伏せた睫毛が目の前まで来ている。
 拒まなければいけない。
 そう思ったはずなのに、頬が火照る。
 瞼が勝手に閉じていく。


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