お帰り、僕のフェアリー
静稀の中で子供が大きくなるにつれて、透析の回数と時間が増えた。
6ヶ月めからは毎日となった。
「自分が機械人間みたいな気がする~。機械に生かされてる~。」
透析による急激な低血圧と貧血はあいかわらずなのに、それ以外はずっと高血圧という、もうわけがわからない状態の静稀。
「目が回る~」
「星が飛んでる~」
「目の前が暗くなる~」
と、僕にしがみついてわめいてる姿は、本当につらそうでかわいそうなはずなのに、何だか楽しそうで可愛くも見えた。
一般的な妊婦さんより大変な状況なのに、静稀はやっぱり幸せそうだった。
8ヶ月め……妊娠34週め。
夜中に、僕の携帯電話が鳴り響いた。
病院から、静稀がトイレに立った瞬間にどっと出血し、切迫早産でMFICU(母体胎児集中治療室)に入ったとの知らせだった。
僕はすぐにタクシーを呼び、静稀の実家の留守電にメッセージを残して、病院に駆け付けた。
検査の結果、静稀の体内で赤ちゃんのこれ以上の成長は望めないのみならず、もはや分娩しないと命が危ないと告げられた。
僕にとっては静稀の命こそ大事なのだが、静稀は違った。
「赤ちゃんを助けて!」
悲痛な叫びをあげた後、静稀は意識を失った。
「静稀!!!」
僕は看護師さんに静稀のそばからどかされても、静稀の名前を呼び続けた。
「静稀!静稀!」
静稀はそのまま分娩室へ運ばれていった。
……例え帝王切開になっても、分娩の時には僕も一緒に入室するはずった……静稀の手を握って励ましてあげるはすだった……。
僕は何もできないことが悲しくて、口惜しくて、唇をかみしめて突っ立っていた。
1時間ほどで、赤ちゃんは取り上げられた。
1500gに満たない男の子だった。
すぐにNICU(新生児集中管理室)に運ばれた我が子ももちろん気になったが、僕は静稀が心配でしかたなかった。
いつまでたっても、静稀は出てこない。
僕も呼ばれない。
どうしても、悪い方向へと考えが及ぶ。
まさか、出血多量?
脳の血管が切れた?
……静稀が透析を始めてから、色々勉強してきたため、どんどん不安が募った。
しばらく経過してから、看護師さんが出てきた。
「大量出血で自己血では足りません。輸血の同意書にサインをお願いします!」
僕は慌てて言われるがままサインした。
確か2リットルの自己血を準備してたのに、足りないだなんて!
「血液は足りるんですか!僕の血も使ってください!」
看護師さんは、困ったように
「保存血液の在庫量は問題ないのですが……出血が止まってくださるといいのですが。」
と言った。
輸血が間に合わない出血速度、ってこと?
僕は、ガクガクと自分が震えていることに気づいた。
「あ!待って!静稀のそばについていてやりたいのですが!」
扉の向こうへ走る看護師さんにそう声をかけたが、
「意識が戻られたらお呼びします!」
と、いう言葉を残して扉は閉まった。
……まだ意識も戻らない?
静稀……。
6ヶ月めからは毎日となった。
「自分が機械人間みたいな気がする~。機械に生かされてる~。」
透析による急激な低血圧と貧血はあいかわらずなのに、それ以外はずっと高血圧という、もうわけがわからない状態の静稀。
「目が回る~」
「星が飛んでる~」
「目の前が暗くなる~」
と、僕にしがみついてわめいてる姿は、本当につらそうでかわいそうなはずなのに、何だか楽しそうで可愛くも見えた。
一般的な妊婦さんより大変な状況なのに、静稀はやっぱり幸せそうだった。
8ヶ月め……妊娠34週め。
夜中に、僕の携帯電話が鳴り響いた。
病院から、静稀がトイレに立った瞬間にどっと出血し、切迫早産でMFICU(母体胎児集中治療室)に入ったとの知らせだった。
僕はすぐにタクシーを呼び、静稀の実家の留守電にメッセージを残して、病院に駆け付けた。
検査の結果、静稀の体内で赤ちゃんのこれ以上の成長は望めないのみならず、もはや分娩しないと命が危ないと告げられた。
僕にとっては静稀の命こそ大事なのだが、静稀は違った。
「赤ちゃんを助けて!」
悲痛な叫びをあげた後、静稀は意識を失った。
「静稀!!!」
僕は看護師さんに静稀のそばからどかされても、静稀の名前を呼び続けた。
「静稀!静稀!」
静稀はそのまま分娩室へ運ばれていった。
……例え帝王切開になっても、分娩の時には僕も一緒に入室するはずった……静稀の手を握って励ましてあげるはすだった……。
僕は何もできないことが悲しくて、口惜しくて、唇をかみしめて突っ立っていた。
1時間ほどで、赤ちゃんは取り上げられた。
1500gに満たない男の子だった。
すぐにNICU(新生児集中管理室)に運ばれた我が子ももちろん気になったが、僕は静稀が心配でしかたなかった。
いつまでたっても、静稀は出てこない。
僕も呼ばれない。
どうしても、悪い方向へと考えが及ぶ。
まさか、出血多量?
脳の血管が切れた?
……静稀が透析を始めてから、色々勉強してきたため、どんどん不安が募った。
しばらく経過してから、看護師さんが出てきた。
「大量出血で自己血では足りません。輸血の同意書にサインをお願いします!」
僕は慌てて言われるがままサインした。
確か2リットルの自己血を準備してたのに、足りないだなんて!
「血液は足りるんですか!僕の血も使ってください!」
看護師さんは、困ったように
「保存血液の在庫量は問題ないのですが……出血が止まってくださるといいのですが。」
と言った。
輸血が間に合わない出血速度、ってこと?
僕は、ガクガクと自分が震えていることに気づいた。
「あ!待って!静稀のそばについていてやりたいのですが!」
扉の向こうへ走る看護師さんにそう声をかけたが、
「意識が戻られたらお呼びします!」
と、いう言葉を残して扉は閉まった。
……まだ意識も戻らない?
静稀……。