お帰り、僕のフェアリー
僕は看護師さんに、廊下に押し出された。
……静稀は、脳出血を起こしていたらしい。
急遽、脳内の止血と、血圧を下げる処置を施された。
「旦那さんが気づくのが早かったので、速やかに蘇生できました。ただ血腫大きいのですぐに血腫を取り除く手術をします。」
僕は、また別の同意書にサインをさせられる。
静稀は脳外科の当直の先生に引き渡され、穿頭血腫除去術を施された。
夜が明けて、日が昇る頃、静稀はようやく戻ってきた。
ICU(衆中治療室)で、ガラス越しに見た静稀は、頭に包帯を巻かれ人形のように横たわっていた。
9時過ぎに、静稀のお父さまとお母さまが到着された。
「……やはり、中絶させるべきだった……」
そう言って、お父さまは涙をこぼさないように、天を見上げた。
お母さまが、涙ぐんで、お父さまに寄り添う。
「どれだけ言っても、静稀は諦めませんでしたわ。」
お二人の気持ちがわかりすぎるほどわかって、つらかった。
僕らにできることは、今はただ祈ることだけなのだろうか。
静稀……
お昼前に、産婦人科の先生が生まれた子の呼吸管理について説明してくださった。
僕と静稀のご両親は、NICU(新生児集中管理室)のガラス越しに赤ちゃんと対面した。
たくさんのチューブで機械に繋がれた我が子の姿はあまりにも痛々しかった。
助産婦さんが、顔をこちらに向けてくださる。
青白い、細い細い身体に、大きな瞳。
……まだ人間とは思えない身体なのに、目立って見えてないだろうにキラキラ輝いて……彼は確かに、静稀と僕の面影を持っていた。
体中にこみ上げてくる愛しさ。
お父さまもお母さまも、その瞬間は、喜びに目を輝かせた。
そして、すぐにまた、こんなにも愛らしい我が子を知らない静稀が哀れで……僕らは3人で嗚咽した。
静稀、僕たちの子供は、一生懸命生きようとしている。
君も、どうか、戻ってきてくれ。
僕らを置いて、逝ってしまわないでくれ。
その夜、静稀が目を開いた。
すぐに僕らはICUに入れていただき、静稀に呼びかけた。
静稀の耳には僕らの声は届いてないようだった。
それどころか、静稀の目にも僕らは映ってないのだろうか。
静稀は、ただ目を開いて、何か、声を発していた。
……どうやら、歌を歌っているようだった。
とりあえずは、生きている。
僕は、それだけでも、心からの感謝を神に、そして静稀を診てくださった、処置してくださった先生方に感謝した。
3日後、僕は我が子に触れる許可をいただいた。
てっきり、本当にこの手で触れるだけだと思っていたら、僕の予想外の行為をさせられた。
僕は上半身を消毒させられ、なんと、素肌のこの胸に、やはり裸の我が子を乗せられたのだ!
……カンガルーケア、というらしい。
本来なら、母親の胸にぴったりと抱くものらしいが、今の静稀はとても動けないので僕が代役を務めることになった。
……静稀は、脳出血を起こしていたらしい。
急遽、脳内の止血と、血圧を下げる処置を施された。
「旦那さんが気づくのが早かったので、速やかに蘇生できました。ただ血腫大きいのですぐに血腫を取り除く手術をします。」
僕は、また別の同意書にサインをさせられる。
静稀は脳外科の当直の先生に引き渡され、穿頭血腫除去術を施された。
夜が明けて、日が昇る頃、静稀はようやく戻ってきた。
ICU(衆中治療室)で、ガラス越しに見た静稀は、頭に包帯を巻かれ人形のように横たわっていた。
9時過ぎに、静稀のお父さまとお母さまが到着された。
「……やはり、中絶させるべきだった……」
そう言って、お父さまは涙をこぼさないように、天を見上げた。
お母さまが、涙ぐんで、お父さまに寄り添う。
「どれだけ言っても、静稀は諦めませんでしたわ。」
お二人の気持ちがわかりすぎるほどわかって、つらかった。
僕らにできることは、今はただ祈ることだけなのだろうか。
静稀……
お昼前に、産婦人科の先生が生まれた子の呼吸管理について説明してくださった。
僕と静稀のご両親は、NICU(新生児集中管理室)のガラス越しに赤ちゃんと対面した。
たくさんのチューブで機械に繋がれた我が子の姿はあまりにも痛々しかった。
助産婦さんが、顔をこちらに向けてくださる。
青白い、細い細い身体に、大きな瞳。
……まだ人間とは思えない身体なのに、目立って見えてないだろうにキラキラ輝いて……彼は確かに、静稀と僕の面影を持っていた。
体中にこみ上げてくる愛しさ。
お父さまもお母さまも、その瞬間は、喜びに目を輝かせた。
そして、すぐにまた、こんなにも愛らしい我が子を知らない静稀が哀れで……僕らは3人で嗚咽した。
静稀、僕たちの子供は、一生懸命生きようとしている。
君も、どうか、戻ってきてくれ。
僕らを置いて、逝ってしまわないでくれ。
その夜、静稀が目を開いた。
すぐに僕らはICUに入れていただき、静稀に呼びかけた。
静稀の耳には僕らの声は届いてないようだった。
それどころか、静稀の目にも僕らは映ってないのだろうか。
静稀は、ただ目を開いて、何か、声を発していた。
……どうやら、歌を歌っているようだった。
とりあえずは、生きている。
僕は、それだけでも、心からの感謝を神に、そして静稀を診てくださった、処置してくださった先生方に感謝した。
3日後、僕は我が子に触れる許可をいただいた。
てっきり、本当にこの手で触れるだけだと思っていたら、僕の予想外の行為をさせられた。
僕は上半身を消毒させられ、なんと、素肌のこの胸に、やはり裸の我が子を乗せられたのだ!
……カンガルーケア、というらしい。
本来なら、母親の胸にぴったりと抱くものらしいが、今の静稀はとても動けないので僕が代役を務めることになった。