お帰り、僕のフェアリー
「私で、いいんですか?」

……ん?

よくわからないけれど、僕の言葉が、静稀には求婚的なものに聞こえた?
いや、いずれは、とは思うけど、今はまだ時期じゃないだろう。

僕のなかの冷静な部分はそう思うのだが、静稀への愛しさが
「祖母に静稀を紹介したかったよ。絶対喜んでくれたのにね。」
と、ついつい肯定のような返事をしてしまった。

まあ、いいか。
静稀が喜んでくれるのなら、何でもいい。

「mon amour... je t'aime...」
僕の愛しい人。
愛してる。
愛してる。

僕は静稀をドレスごと抱き上げて、口づけた。
「襖を開けてくれるかい?」

静稀はその意味を察知し、はにかみながら、襖を開けた。

片手を放したため、ドレスがするりと落ちる。

「あ!」
慌ててドレスを追いかけようともがく静稀を、強く抱きしめた。

「逃がさない。」

僕の強い言葉に、静稀はドレスと僕を交互に見て、悲しそうな顔をした。
「でも、ドレスが皺になっちゃ……」

静稀の言葉を遮って、深く口づける。

もう、待たない。
静稀を、僕のものにする。

ふかふかのお布団にそっと静稀をおろして、また口づける。

静稀の瞳がきらきらと輝いている。
いとしくて、いとしくて、たまらない。

僕は静稀の体中に、口づけを繰り返す。
跡をつけないように、優しく、そっと。
白い静稀の肢体は、とても美しくて……。

この夜僕は、静稀を心ゆくまで愛した。
僕たちは、強く、結ばれた。



「bonjour」
僕の腕の中で、静稀が目覚めたのは、10時過ぎだった。

裸のまま眠ってしまった静稀が風邪を引かないよう、2人でシーツにくるまるように蒲団に入っていたため、ほとんど身動きが取れず、僕の両腕が痺れてしまっていることは、内緒。

まだうまく目が開かない静稀の両のまぶたに、優しく口づける。
「気持ちいい……」
うっとりとそう言って、静稀は目を開いた。
「毎日こうして起こしてほしいよぉ。」

静稀は朝が苦手なのかな?
「うちに、引っ越してくるかい?部屋は空いてるよ。」

「え!いいの!?」
静稀は、がばっと飛び起きた。

僕も起き上がり、静稀を抱きしめて唇に口づける。
「僕はいつでも歓迎するよ。でも歌劇団には内緒としても、静稀のご両親には承諾をもらわないと、ね。」

「あ~~~~~。」
静稀は目に見えて、がっくりと脱力した。
……親御さんは、厳しいんだっけ。

「あ!そうだ!」
静稀が急に、蒲団から出て、自分が裸なことに気づき、慌ててシーツにくるまった。
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