お帰り、僕のフェアリー
僕は、クラブ活動も役員もしていなかったのだが、クラス写真以外に1枚。
「これ!かっこいい!セルジュ、綺麗!」
義人・彩乃と3人で映った写真が、「歳寒三友」と題されて、大きく掲載されている。
「さいかんさんゆう?なに?」
「歳寒の三友、ね。中国の言葉だよ。日本で言う、松竹梅。」
目立つ存在だった3人が親友付き合いをはじめてまもなく、僕らは周囲から、3人の名字の頭を並べて「松竹梅」と呼ばれ始めたらしい。
日本では、おめでたい存在であると同時に、どうしても松>竹>梅という優劣のイメージもある。
僕自身が彼らより優れてるとは思えないので、僕は敢えて「歳寒三友」という言葉で表現することにしている。
こちらには「清廉潔白」「節操」という、とても美しい意味があるのもいい。
「由未ちゃんが言ってたの。3人とも違う魅力で素敵だった、って。彩乃さんは素っ気ないけどものすごく美形で、セルジュはフランス人形のようなナルシストの美形で、義人さんは純和風美形だった、って。私、セルジュをどうしても見てみたくて。」
……そんなことだろうと思ったよ。
「さすがに20才の僕はフランス人形じゃなくなってただのおっさんだけどね。」
実際は、彩乃も長かった髪を切り普通のイケメンになってるが。
静希はぷるぷると首を横に振る。
「ううん。私、初めてセルジュに図書館で会った時、王子様!って思ったもん。こんな綺麗な男の人見たことなくて、夢かと思ったぐらい。光の中で。」
「僕には、静稀が妖精に見えたよ。光の中で。」
2人で微笑み合って、どちらからともなく、抱き合う。
あの日のときめきより、強く、深い想いを、僕らは互いに伝えあった。
そんな風に、僕らの幸せな日々が過ぎてゆく。
静稀は、何とか、「腰を入れて」舞うことがさまになってきたらしい。
静稀の集合日、つまり、お稽古開始の日の前日、彩乃は
「二週間お疲れ様。毎日大変やったと思うけど、見違えるほどよくなってるから、自信持ったらいい。」
と、太鼓判を押してくれた。
静稀は、涙でうるうるになった。
「ありがとうございます。そんな……ずっと彩乃先生、温かく見てくださって……マサコさんも、由未ちゃんも、みんな優しくて、ここは天国みたいで、何も大変なんて。毎日、幸せでした。」
静稀の瞳から、ほろほろ涙がこぼれ落ちる。
明日から静稀には、また、煉獄が始まるんだな。
居たたまれない、苦しい想いをいっぱいするんだろうな。
容易に想像がついて、僕は痛む胸を押さえた。
彩乃は、静稀の涙に戸惑い、僕のほうを見て救いを求める。
僕は、静稀の肩を抱き寄せて、ハンカチで涙をすくった。
「歌劇団のお稽古が始まっても、迷いが生じたら、いつでもみるし呼んでくれたらいいから。君は、もう、俺の弟子やから。」
彩乃が力強くそう言ってくれたのを聞いて、静稀はもちろん、僕まで涙が。
「これ!かっこいい!セルジュ、綺麗!」
義人・彩乃と3人で映った写真が、「歳寒三友」と題されて、大きく掲載されている。
「さいかんさんゆう?なに?」
「歳寒の三友、ね。中国の言葉だよ。日本で言う、松竹梅。」
目立つ存在だった3人が親友付き合いをはじめてまもなく、僕らは周囲から、3人の名字の頭を並べて「松竹梅」と呼ばれ始めたらしい。
日本では、おめでたい存在であると同時に、どうしても松>竹>梅という優劣のイメージもある。
僕自身が彼らより優れてるとは思えないので、僕は敢えて「歳寒三友」という言葉で表現することにしている。
こちらには「清廉潔白」「節操」という、とても美しい意味があるのもいい。
「由未ちゃんが言ってたの。3人とも違う魅力で素敵だった、って。彩乃さんは素っ気ないけどものすごく美形で、セルジュはフランス人形のようなナルシストの美形で、義人さんは純和風美形だった、って。私、セルジュをどうしても見てみたくて。」
……そんなことだろうと思ったよ。
「さすがに20才の僕はフランス人形じゃなくなってただのおっさんだけどね。」
実際は、彩乃も長かった髪を切り普通のイケメンになってるが。
静希はぷるぷると首を横に振る。
「ううん。私、初めてセルジュに図書館で会った時、王子様!って思ったもん。こんな綺麗な男の人見たことなくて、夢かと思ったぐらい。光の中で。」
「僕には、静稀が妖精に見えたよ。光の中で。」
2人で微笑み合って、どちらからともなく、抱き合う。
あの日のときめきより、強く、深い想いを、僕らは互いに伝えあった。
そんな風に、僕らの幸せな日々が過ぎてゆく。
静稀は、何とか、「腰を入れて」舞うことがさまになってきたらしい。
静稀の集合日、つまり、お稽古開始の日の前日、彩乃は
「二週間お疲れ様。毎日大変やったと思うけど、見違えるほどよくなってるから、自信持ったらいい。」
と、太鼓判を押してくれた。
静稀は、涙でうるうるになった。
「ありがとうございます。そんな……ずっと彩乃先生、温かく見てくださって……マサコさんも、由未ちゃんも、みんな優しくて、ここは天国みたいで、何も大変なんて。毎日、幸せでした。」
静稀の瞳から、ほろほろ涙がこぼれ落ちる。
明日から静稀には、また、煉獄が始まるんだな。
居たたまれない、苦しい想いをいっぱいするんだろうな。
容易に想像がついて、僕は痛む胸を押さえた。
彩乃は、静稀の涙に戸惑い、僕のほうを見て救いを求める。
僕は、静稀の肩を抱き寄せて、ハンカチで涙をすくった。
「歌劇団のお稽古が始まっても、迷いが生じたら、いつでもみるし呼んでくれたらいいから。君は、もう、俺の弟子やから。」
彩乃が力強くそう言ってくれたのを聞いて、静稀はもちろん、僕まで涙が。