お帰り、僕のフェアリー
夢を見た。
ゆらゆらゆらゆら、僕も周囲もゆれていた。
桜吹雪のなかで、静稀が笑っている。
目を開けると、静稀はいない。
また、眠りに落ちる。
ゆれている。
足元が崩れ落ちる。
僕は、ふわふわ落ちてく。
静稀が、手を差し伸べる。
僕は、静稀にしがみつく。
ああ、静稀だ。
僕の、静稀だ。
会いたかった…。
目覚めると、既に外が薄暗かった。
当たり前だが、静稀はいない。
僕は、急に孤独に襲われる。
とめどなくこぼれ落ちる涙。
自分のものとは思えない嗚咽。
胸が痛い。
苦しい。
でも、これが現実なんだと思い知らされる。
残酷な、現実。
それから僕は、夢か幻かもわからないまま、静稀の面影を追い求めた。
熱にうなされていた、ようだ。
身体中が痛み、幾度も汗だくで目覚めたが、静稀がいないことを認識すると、また眠りに陥った。
夢の中でなら静稀に逢える。
僕は、悲しい現実から逃げるように、眠る。
…気が狂いそうだ。
4日後、僕はようやくスッキリ目覚めることができた。
熱が下がり、節々の痛みも消える。
何より、憑き物が落ちたように、心が軽くなっていた。
Ce qui sera, sera(なるようになるさ)
フランスに行こう、いや、帰ろう。
僕は、知らず知らずのうちに決意を固めていた。
そうと決めたら僕の行動は、早かった。
フランスの伯父や父に、渡仏の意志を伝える。
年に一度も顔を合わせない父はともかく、静稀とのことを知っている伯父は、複雑そうだった。
それでいいのか?と、何度も聞かれた。
かつて僕が従妹との葛藤から逃れるように日本に渡ったことに、伯父もまた責任を感じてきたのだろう。
全ては時間が解決してくれる。
僕は、伯父に改めて感謝を伝えるとともに、これからを頼む。
来年春、大学の卒業を待って、僕は移住することになった。
お世話になっている石井さんにも伝えた。
彼女は、伸び悩む榊高遠くんを持て余していたが、それでも役付きのよさと美しさで雪だるま式に増えるファンの対応に追われていた。
僕の渡仏は、石井さんにとって計算外だったようだ。
『榊に伝えます!』
と電話越しに宣言された。
「いや、言う必要もないでしょう。もう済んだことですから。ただ、僕は、石井さんにお礼を言いたくて。ありがとうございました。お役に立てなくて、すみませんでした。」
石井さんのため息が聞こえてくる。
『残念です。』
観劇を断っても、専門チャンネルをつけなくても……夢の中に静稀は現れた。
僕は、無理矢理頭から追い出して、卒論に没頭するふりをした。
全ては、もう、過去の話だ。
今のこの状況をちゃんと見据えるんだ。
静稀は僕を頼りにはしていない。
僕も、静稀も、独りで生きている。
これが現実だ。
ゆらゆらゆらゆら、僕も周囲もゆれていた。
桜吹雪のなかで、静稀が笑っている。
目を開けると、静稀はいない。
また、眠りに落ちる。
ゆれている。
足元が崩れ落ちる。
僕は、ふわふわ落ちてく。
静稀が、手を差し伸べる。
僕は、静稀にしがみつく。
ああ、静稀だ。
僕の、静稀だ。
会いたかった…。
目覚めると、既に外が薄暗かった。
当たり前だが、静稀はいない。
僕は、急に孤独に襲われる。
とめどなくこぼれ落ちる涙。
自分のものとは思えない嗚咽。
胸が痛い。
苦しい。
でも、これが現実なんだと思い知らされる。
残酷な、現実。
それから僕は、夢か幻かもわからないまま、静稀の面影を追い求めた。
熱にうなされていた、ようだ。
身体中が痛み、幾度も汗だくで目覚めたが、静稀がいないことを認識すると、また眠りに陥った。
夢の中でなら静稀に逢える。
僕は、悲しい現実から逃げるように、眠る。
…気が狂いそうだ。
4日後、僕はようやくスッキリ目覚めることができた。
熱が下がり、節々の痛みも消える。
何より、憑き物が落ちたように、心が軽くなっていた。
Ce qui sera, sera(なるようになるさ)
フランスに行こう、いや、帰ろう。
僕は、知らず知らずのうちに決意を固めていた。
そうと決めたら僕の行動は、早かった。
フランスの伯父や父に、渡仏の意志を伝える。
年に一度も顔を合わせない父はともかく、静稀とのことを知っている伯父は、複雑そうだった。
それでいいのか?と、何度も聞かれた。
かつて僕が従妹との葛藤から逃れるように日本に渡ったことに、伯父もまた責任を感じてきたのだろう。
全ては時間が解決してくれる。
僕は、伯父に改めて感謝を伝えるとともに、これからを頼む。
来年春、大学の卒業を待って、僕は移住することになった。
お世話になっている石井さんにも伝えた。
彼女は、伸び悩む榊高遠くんを持て余していたが、それでも役付きのよさと美しさで雪だるま式に増えるファンの対応に追われていた。
僕の渡仏は、石井さんにとって計算外だったようだ。
『榊に伝えます!』
と電話越しに宣言された。
「いや、言う必要もないでしょう。もう済んだことですから。ただ、僕は、石井さんにお礼を言いたくて。ありがとうございました。お役に立てなくて、すみませんでした。」
石井さんのため息が聞こえてくる。
『残念です。』
観劇を断っても、専門チャンネルをつけなくても……夢の中に静稀は現れた。
僕は、無理矢理頭から追い出して、卒論に没頭するふりをした。
全ては、もう、過去の話だ。
今のこの状況をちゃんと見据えるんだ。
静稀は僕を頼りにはしていない。
僕も、静稀も、独りで生きている。
これが現実だ。