お帰り、僕のフェアリー
「ごめんね。ずっと。気づいてあげられなくて。」
ただでさえ閑静な住宅街。
こんな寒い深夜は静まり返っていて、僕の声はまっすぐ静稀に届く。
静稀は、じりじりと後ずさりする。
「ごめんなさい…私…ごめんなさい…」
踵を返して、走り出す静稀。
また逃げるのか!
だめだ!
僕は、玄関先で待たなかったことを激しく後悔した。
今から、降りても間に合わない。
また明日も来るとは限らないのに。
いや!
諦めるな!
逃げるな!
僕は、彩乃と義人の言葉を思い出し、迷わず、バルコニーから飛び降りた。
「待って!…うわっ!!!」
何の受け身もとれない僕は、ドサッと芝生に変な落ち方をしてしまった。
体中に激痛が走る。
痛みに声も出せず、動けない。
が、静稀を追いかけなきゃ、と、体を起こす。
右腕に鋭い痛みを感じた。
「くっ!」
折れた?
いったーいっ!
この寒いのに、脂汗が滲む。
ダメだ…早く立たなきゃ。
静稀を追わなきゃ。
何とか膝を立てるが、服が裂けて血が出てきてる。
満身創痍だな。
それでも立ち上がろうと、顔を上げると、門の向こうに真っ青な顔の静稀が見えた。
戻ってきてくれたんだ。
飛び降りた甲斐あったな。
「静稀」
そう呼んだつもりだったが、かすれて声が出ない。
喉に触れると、ぬるりとなま温かい血。
右頬から顎にかけて、怪我をしたようだ。
僕の綺麗な顔から血がしたたり流れるのを見て、静稀は僕に駆け寄ってきた。
「セルジュ!ひどい!救急車!」
泣きながら、僕のそばにひざまずいて、携帯電話を取り出す静稀。
僕は力を振り絞って、静稀を抱きしめる…つもりだったが、その力がなく、静稀にぐったりと寄りかかってしまった。
さまにならないな。
「救急車、いや。静稀が手当てして。」
「だって!落ちたんでしょ?頭打ってたら大変!」
静稀の身体、静稀の声、静稀…。
僕は、痛みでおかしくなってたのかもしれないが、静稀に触れていることがうれしくて笑ってしまった。
「落ちてない、飛び降りたんだ。頭は大丈夫。顔と、脚を切ってる。あと、肩が痛い。それから、右腕、折れたかも。」
クスクスと笑って僕は静稀に訴えた。
「ごめん、独りじゃ動けない。助けて。」
こんなつもりじゃなかったのにな。
今夜はクリスマスツリーを静稀をおびき寄せるエサにしたつもりだったのに、これじゃ僕自身がエサだ。
カッコ悪いな。
でも、僕はもう静稀を放すつもりはなかった。
静稀は、涙を振りはらい、僕を助けて起こしてくれた。
痛みに声を失う。
「ほんとに救急車、いいの?」
ボトボトと血を流す僕に、静稀が不安そうに尋ねた。
僕は、頷いてため息をついた。
ただでさえ閑静な住宅街。
こんな寒い深夜は静まり返っていて、僕の声はまっすぐ静稀に届く。
静稀は、じりじりと後ずさりする。
「ごめんなさい…私…ごめんなさい…」
踵を返して、走り出す静稀。
また逃げるのか!
だめだ!
僕は、玄関先で待たなかったことを激しく後悔した。
今から、降りても間に合わない。
また明日も来るとは限らないのに。
いや!
諦めるな!
逃げるな!
僕は、彩乃と義人の言葉を思い出し、迷わず、バルコニーから飛び降りた。
「待って!…うわっ!!!」
何の受け身もとれない僕は、ドサッと芝生に変な落ち方をしてしまった。
体中に激痛が走る。
痛みに声も出せず、動けない。
が、静稀を追いかけなきゃ、と、体を起こす。
右腕に鋭い痛みを感じた。
「くっ!」
折れた?
いったーいっ!
この寒いのに、脂汗が滲む。
ダメだ…早く立たなきゃ。
静稀を追わなきゃ。
何とか膝を立てるが、服が裂けて血が出てきてる。
満身創痍だな。
それでも立ち上がろうと、顔を上げると、門の向こうに真っ青な顔の静稀が見えた。
戻ってきてくれたんだ。
飛び降りた甲斐あったな。
「静稀」
そう呼んだつもりだったが、かすれて声が出ない。
喉に触れると、ぬるりとなま温かい血。
右頬から顎にかけて、怪我をしたようだ。
僕の綺麗な顔から血がしたたり流れるのを見て、静稀は僕に駆け寄ってきた。
「セルジュ!ひどい!救急車!」
泣きながら、僕のそばにひざまずいて、携帯電話を取り出す静稀。
僕は力を振り絞って、静稀を抱きしめる…つもりだったが、その力がなく、静稀にぐったりと寄りかかってしまった。
さまにならないな。
「救急車、いや。静稀が手当てして。」
「だって!落ちたんでしょ?頭打ってたら大変!」
静稀の身体、静稀の声、静稀…。
僕は、痛みでおかしくなってたのかもしれないが、静稀に触れていることがうれしくて笑ってしまった。
「落ちてない、飛び降りたんだ。頭は大丈夫。顔と、脚を切ってる。あと、肩が痛い。それから、右腕、折れたかも。」
クスクスと笑って僕は静稀に訴えた。
「ごめん、独りじゃ動けない。助けて。」
こんなつもりじゃなかったのにな。
今夜はクリスマスツリーを静稀をおびき寄せるエサにしたつもりだったのに、これじゃ僕自身がエサだ。
カッコ悪いな。
でも、僕はもう静稀を放すつもりはなかった。
静稀は、涙を振りはらい、僕を助けて起こしてくれた。
痛みに声を失う。
「ほんとに救急車、いいの?」
ボトボトと血を流す僕に、静稀が不安そうに尋ねた。
僕は、頷いてため息をついた。