お帰り、僕のフェアリー
「セルジュ~。静稀さんの初舞台公演、一緒に行こう~。」
「あ。じゃあ、私、お二人を招待します。前のほうの席はまだいただけないんですが、どうぞ!」
由未の呑気な思いつきに、静稀がそう申し出る。
無邪気に喜びはしゃぐ由未を制して
「だめだよ。チケットは安いもんじゃないんだから。逆にお願いして、買わせてもらえるかな?でも、もうとっくに生徒席の申込みも過ぎているだろうから、迷惑をかけることになるなら、こちらで準備するよ?」
と、静稀に提案した。
歌劇団の生徒は、事前に申し込みをすれば1人1公演につき3枚ずつ購入できて、それを生徒席と言う。
……祖母はいつも生徒席に座っていたので、僕も恩恵にあやかっていた。
上級生から順に3枚ずつ割り当てられるので、初舞台の静稀は、もちろん後方になるだろうが、生徒席は生徒席だ。
ある種のステイタスですらある貴重な席、余ってるわけがない。
静稀は柔らかく微笑んで
「お心遣いありがとうございます。本当によくご存じなんですね。今度の公演は初舞台なので、両親や祖父母が親戚を連れて何度も来る予定なんです。ですから、1日ぐらい身内には遠慮してもらいます。是非いらしてください。」
と言い、由未を浮かれさせた。
あまり固辞するのも却って失礼だろう。
「では、遠慮なく。ありがとう。楽しみにしているね。」
「お花代もチケット代も、やめてくださいね。フランス語を教えてくださるお礼にさせてくださいね。」
当然、代金を払う気だった僕は、静稀に釘を刺されて苦笑するしかなかった。
「そういうことなら、喜んで。でも、静稀、初舞台の研1(研究科1年生)なら、毎日すごく忙しいんじゃない?」
確か、初日の翌日から新人公演のお稽古も始まるはず。
静稀は、苦笑した。
「ええ、初日が開いたら、もっと忙しくなると思います。新人公演までは毎日睡眠不足でしょうね。」
歌劇団は、若手育成のために、公演期間の後半の一夜に「新人公演」と銘打って公演する。
静稀のように初舞台を踏む研1から研7までの、本公演でいい役の付かない下級生が、上級生の役を与えられることで、生徒にとっては勉強の場、演出家にとっては青田買いの場となる。
「あ。じゃあ、私、お二人を招待します。前のほうの席はまだいただけないんですが、どうぞ!」
由未の呑気な思いつきに、静稀がそう申し出る。
無邪気に喜びはしゃぐ由未を制して
「だめだよ。チケットは安いもんじゃないんだから。逆にお願いして、買わせてもらえるかな?でも、もうとっくに生徒席の申込みも過ぎているだろうから、迷惑をかけることになるなら、こちらで準備するよ?」
と、静稀に提案した。
歌劇団の生徒は、事前に申し込みをすれば1人1公演につき3枚ずつ購入できて、それを生徒席と言う。
……祖母はいつも生徒席に座っていたので、僕も恩恵にあやかっていた。
上級生から順に3枚ずつ割り当てられるので、初舞台の静稀は、もちろん後方になるだろうが、生徒席は生徒席だ。
ある種のステイタスですらある貴重な席、余ってるわけがない。
静稀は柔らかく微笑んで
「お心遣いありがとうございます。本当によくご存じなんですね。今度の公演は初舞台なので、両親や祖父母が親戚を連れて何度も来る予定なんです。ですから、1日ぐらい身内には遠慮してもらいます。是非いらしてください。」
と言い、由未を浮かれさせた。
あまり固辞するのも却って失礼だろう。
「では、遠慮なく。ありがとう。楽しみにしているね。」
「お花代もチケット代も、やめてくださいね。フランス語を教えてくださるお礼にさせてくださいね。」
当然、代金を払う気だった僕は、静稀に釘を刺されて苦笑するしかなかった。
「そういうことなら、喜んで。でも、静稀、初舞台の研1(研究科1年生)なら、毎日すごく忙しいんじゃない?」
確か、初日の翌日から新人公演のお稽古も始まるはず。
静稀は、苦笑した。
「ええ、初日が開いたら、もっと忙しくなると思います。新人公演までは毎日睡眠不足でしょうね。」
歌劇団は、若手育成のために、公演期間の後半の一夜に「新人公演」と銘打って公演する。
静稀のように初舞台を踏む研1から研7までの、本公演でいい役の付かない下級生が、上級生の役を与えられることで、生徒にとっては勉強の場、演出家にとっては青田買いの場となる。