お帰り、僕のフェアリー
静稀が、上級生との役替わりを繰り返して実力と人気をつけてのし上がってきているのに対して悪く言う人が少ないのは、ある意味、渚さんのおかげだと僕は思っている。
だって、明らかに実力も人気もない渚さんが、なぜか、一作ごとに番手を上げられて、次の公演からは二番手スターなんだから。
静稀達の名古屋公演の裏で、渚さんは小劇場初主演を果たしたが、笑うぐらい売れず、完成度も低かったようだ。
それでも、二番手スター昇格。
あまりのことに、渚さんより上の先輩方が何人も退団されるらしい。
大丈夫か?
レベルの低下が懸念されるが、それでも、現在のトップさんは熱心なかたらしく、静稀以外に自主稽古をする生徒が増えたとか。
……それを聞いて、むしろ今まで自主稽古の習慣がなかったことに僕は驚いたよ。
静稀、やっぱり変わり者なんだな。
ま、だからこそ抜擢されてきたんだろうし、逆に抜かれた生徒はやる気を失ってたのかもしれない。
いずれにせよ、熱心な静稀は演出家や振付の先生、トップさんにはかわいがられているようだ。
しかし、ここにきて、はじめての渚さんとの役替わり対決。
ハッキリ言って、静稀のほうが上に決まってる。
渚さんは、さぞおもしろくないだろう。
静稀にとっては、いつもの役替わりでも、渚さんにとっては初めての競合。
プライドの高い渚さんが、いまさら静稀を虐めるとは思わないが…。
静稀が渚さんを慕ってただけに、僕はとても心配だった。
毎日のお稽古が終わると、静稀はファンクラブ幹部のかたが準備してくださった車で自宅マンションまで送っていただく。
そのまま部屋には上がらず、マンションの地下駐車場に待機してもらってるタクシーに乗り換えて我が家へ。
面倒なようだが一番安全だろうと、石井さんが考えてくださった。
静稀は免許を取りたいらしいが、僕らが揃って反対しているので、今のところはおとなしくしているようだ。
「今日ね、渚さんがね~」
「あ、渚さんもそう仰ってた!」
……毎日必ず入る、渚さん情報。
僕には何の興味もないのだが、静稀がそうして何とか心のバランスをとっていることが伝わってくるので黙って耳を傾ける。
何となく漏れ伝わってくる情報によると、静稀は渚さんに片想いのように報われない気遣いを送り続けているようだ。
渚さんは、悪い人ではないし、静稀が言い張るには、正義感の強い誤解されやすい人、らしい。
しかし、2人の共演番組や舞台からは、渚さんが静稀に対して心を開いている様子は皆無だ。
それでも渚さんは、今回、静稀に
「一緒にいい舞台を作りましょう」
と言ってくださったらしい。
心中穏やかではないだろうに、静稀に変わらず接しようと努力してくださってるのだろう。
かつて静稀を虐めてた、しょうもない上級生とは、確かに違うようだ。
渚さんのプライド、なのかな。
どうかこのまま渚さんが静稀と折り合ってくれ続けるのを祈るばかりだ。
だって、明らかに実力も人気もない渚さんが、なぜか、一作ごとに番手を上げられて、次の公演からは二番手スターなんだから。
静稀達の名古屋公演の裏で、渚さんは小劇場初主演を果たしたが、笑うぐらい売れず、完成度も低かったようだ。
それでも、二番手スター昇格。
あまりのことに、渚さんより上の先輩方が何人も退団されるらしい。
大丈夫か?
レベルの低下が懸念されるが、それでも、現在のトップさんは熱心なかたらしく、静稀以外に自主稽古をする生徒が増えたとか。
……それを聞いて、むしろ今まで自主稽古の習慣がなかったことに僕は驚いたよ。
静稀、やっぱり変わり者なんだな。
ま、だからこそ抜擢されてきたんだろうし、逆に抜かれた生徒はやる気を失ってたのかもしれない。
いずれにせよ、熱心な静稀は演出家や振付の先生、トップさんにはかわいがられているようだ。
しかし、ここにきて、はじめての渚さんとの役替わり対決。
ハッキリ言って、静稀のほうが上に決まってる。
渚さんは、さぞおもしろくないだろう。
静稀にとっては、いつもの役替わりでも、渚さんにとっては初めての競合。
プライドの高い渚さんが、いまさら静稀を虐めるとは思わないが…。
静稀が渚さんを慕ってただけに、僕はとても心配だった。
毎日のお稽古が終わると、静稀はファンクラブ幹部のかたが準備してくださった車で自宅マンションまで送っていただく。
そのまま部屋には上がらず、マンションの地下駐車場に待機してもらってるタクシーに乗り換えて我が家へ。
面倒なようだが一番安全だろうと、石井さんが考えてくださった。
静稀は免許を取りたいらしいが、僕らが揃って反対しているので、今のところはおとなしくしているようだ。
「今日ね、渚さんがね~」
「あ、渚さんもそう仰ってた!」
……毎日必ず入る、渚さん情報。
僕には何の興味もないのだが、静稀がそうして何とか心のバランスをとっていることが伝わってくるので黙って耳を傾ける。
何となく漏れ伝わってくる情報によると、静稀は渚さんに片想いのように報われない気遣いを送り続けているようだ。
渚さんは、悪い人ではないし、静稀が言い張るには、正義感の強い誤解されやすい人、らしい。
しかし、2人の共演番組や舞台からは、渚さんが静稀に対して心を開いている様子は皆無だ。
それでも渚さんは、今回、静稀に
「一緒にいい舞台を作りましょう」
と言ってくださったらしい。
心中穏やかではないだろうに、静稀に変わらず接しようと努力してくださってるのだろう。
かつて静稀を虐めてた、しょうもない上級生とは、確かに違うようだ。
渚さんのプライド、なのかな。
どうかこのまま渚さんが静稀と折り合ってくれ続けるのを祈るばかりだ。