幸せは、きっとすぐ傍




***


「あー食べた!」


こよみの言葉に和泉達三人が同意した。用意した具材は全て食べてしまった、残すは締めのうどんだけ。和泉は冷蔵庫からうどんを持ってくると、タイマーをかけてうどんを容赦なく入れる。


相変わらず豪快だね、と苦笑するこよみにまあねと返し、菜箸で麺を解していく。タイマーがピピと時間を知らせ、隼人が鍋に箸を伸ばした。隣でその手を彼方が叩き落す。行儀が悪いということらしい。


「彼方のケチー、いいだろ別にー?」

「……と、申しておりますがどうする?」

「いいんじゃない? 鍋だってつついてるんだし」


それもそうかと納得する彼方に隼人がドヤ顔を向ける。そんなことしたら────「痛っ」案の定彼方がべしっと額を叩いた。結構いい音である、が自業自得なので和泉もこよみもスルーだ。こんなのはいつものこと。


私いちばーん、とこよみが鍋に箸を伸ばす。その直後に競うようにして隼人がうどんをつまむ。苦笑した彼方が三番目。それから和泉が一本引っ張って口に入れる。


「まあ普通だよね」

「あん時が変だっただけだ」

「そりゃね」


この三人はうどんに何を期待しているんだ。


内心突っ込みつつしかし和泉も少しだけそう思っていたのでその言葉を呑み込む。それほど酷かったのだあの時は。今回は至って普通の鍋であったが。


もう一本、と箸でつまむ。同時に向こうから彼方の箸が伸びてくる。自分の器によそおうとすると、何故か手応えを感じた。


────何故手応え?


訳が分からず箸でつまんだうどんの先を辿ってみる。するとあろうことが別の箸と繋がっている。箸の持ち主に視線を遣ろうとすると、横で笑い声が弾けた。


「ぶはっ! アンタ等箸の使い方上手すぎるでしょ落とさないとか!」

「つか同じうどん引っ張るとか……! 運命の赤い糸かよ、否違った運命の白いうどんか!」

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