幸せは、きっとすぐ傍

「隼人喩え上手すぎ! 運命の白いうどんとかウケるんだけど!」


和泉と彼方が反応するより先にこよみと隼人が笑い出す。先に笑われてしまったので反応に困り、和泉と彼方は顔を見合わせた。


どうすればいいのだろう。運命の白いうどんについてはどう反応すればいいのだろうか。え、本当にどうしよう。


困惑する和泉と彼方に構わず未だ爆笑中の二人。「ぶはっ……げほ、げほっ」むせている隼人に、とりあえず白い目を向けておいた。一方くつくつと笑いながらも何とか笑いを収めたこよみがうどんを一本つまんだ。


「二人、付き合えばいいのに。何たって『運命の白いうどん』だから……ぷっ」

「こよみおまっ……簡単に言うなよ!」

「何だよ彼方、照れてんのかー?」


そんなことっ……と絶句する彼方。和泉はそれを黙って聞きながら、思う。


そもそもそんなこと人の前で言う訳がない。特に隼人とこよみの前では。こよみは未だしも隼人の前でそんなことをしようものなら末代まで笑われることになる。真面目に。


最も和泉の方は彼方や隼人を恋愛対象として見た事がない、それはこよみとて同じはずである。なのにあんなことを言うということは────和泉はこよみの前に置いてあった缶ビールに目を向けた。こよみは極度の下戸である。


「こよみ酔ってるよ……」

「え? ……あー、マジかよ……」

「何安心してんだ彼方。俺がいる」


それは胸を張っていうことじゃない、と即座に彼方が突っ込みを入れた。それからいきなり疲れた様子で大きな溜め息を一つ。


見慣れているはずの様子だが、────何だかちょっとだけキた。


もしかしたら。もしかしたら、今まで彼方や隼人を恋愛対象として見たことがなかったのは意識したことがなかったからかもしれない。大学時代は四人でそんな話をしたことすらなかった。だから意識したらすぐに────


彼方と視線が合い、困ったように笑われる。それに同じ様な困った笑みを返しながら、和泉は急に湧き上がった気持ちを心の中で転がした。


運命の白いうどんというのを、少しくらい信じてみてもいいかもしれない。

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