幸せは、きっとすぐ傍
「ブルーインパルスって戦闘機なの? ……でも確かにそういう形してるかも」
「何姉貴、調べたの? ちょっと意外だけど嬉しい」
からかうな、と大地の頭を小突く。尚もにやにやとさゆりを見てくる大地は本当に嬉しいらしい。大地は割と表情に出やすいから分かりやすいのである。
それでね、と大地が話題転換。話したくて話したくて仕方ないようである。
学校で話せばいいのにと一度言ったら即答でやだとの返事が返ってきた。まあ学校というのは色々あるから分からないでもない。
「まあそれでさ、ブルーインパルスってのは戦闘機な訳だけど。ブルーはね、六機編隊なの。どの機も大事なんだけど俺は五機が凄いと思う。リード・ソロってあるんだけどこれが本当に凄いんだよなあ……」
実際に見たことはないくせに見てきたかのように話す大地はとても楽しそうで、姉としては嬉しいと思う。さゆりにはこれといって熱を入れられることはなかったから少し羨ましい。
けれど余計に、大地には好きなことを仕事にしてもらいたい。喩えそれがどんなにきつくて危ない仕事だったとしても。
両親に海上自衛官になりたいことを言っていないのだ、大地は。両親は比較的古い考え方の持ち主で、長男は嫁を貰って家を継ぐものだと思っている。加えて大地は傍目に見ても優秀で、県内トップの高校に受かるだろうと言われているくらいだ。
両親だけでなく先生方も大地を気にかけてくれているようで、そんな中自衛官になりたいなんて言えないと嘆いていた。
さゆりは大地の影響もあってそうは思わないが、周りはそうではないらしく自衛隊を否定する人もいるようだ。趣味の範囲にしておけと何度か言われたことがあると言っていた。
そんな大地の唯一の理解者がさゆりで、そう考えれば今回借り出されたのも納得がいく。
さゆりに出来るのは、大地を自衛官の道に進ませる為に周りを説得すること。もしかしたら今回の航空祭で何か自分の中で変わることがあるかもしれない。
そう思いながら、さゆりは大地の話に耳を傾けた。