幸せは、きっとすぐ傍


隼人がマスターにレモンティー二つ、と頼んだ。訊けば千春の分も込みであると言う。


朝来た時美味しかったから、と言った隼人にレモンティーを運んできたマスターが「ありがとうございます」とお辞儀をした。


────と。


「お、千春じゃん。連れは……あれ、隼人?」


からんからん、音のした直後に声が飛んできた。千春のたいちゃん、という声と隼人の太陽という声が重なる。


お互いがお互いにその人物の名前を呼んだことに、即ち知っていたことに驚き、お互いの顔を見つめる。その人物────太陽も千春と隼人が一緒にいることに目を見開き、誰にともなく疑問を投げる。


「え、お前等付き合ってんの?」

「つーか千春、太陽のこと知ってんの?」

「その前に隼人とたいちゃん知り合いなの?」


太陽の疑問に背中を押される形で千春と隼人からも疑問が飛び出した。


どこからどう答えればいいものか。どうすればいいのか分からず黙り込んでいると、マスターは隼人に千春たちと同じテーブルに付くように促し、コーヒーを置いていく。どうやら太陽の分らしい、マスター分かっているのか。


困ったように顔を見合わせる千春と太陽。そんな二人を交互に見遣る太陽。進まないその状況で、一番最初に口を開いたのは千春だった。


「とりあえずたいちゃん、隼人くんは私の彼氏。それで隼人くん、たいちゃんは私の幼馴染だよ」


端的かつ簡単、核心を突いた答えに隼人と太陽はそうなんだと声を揃える。そうだよ、と返し、千春は「じゃあ次、隼人くん」────次を指名。


「俺の友達、こよみがいるだろ、太陽はこよみの彼氏なんだよ。それ繋がり」

「おう。なんだ、話してあるのか、こよみのことは。嗚呼でもこよみが言ってたっけ。俺は千春のただの幼馴染だから安心しろ隼人」

「その前にこよみがいるんだから疑ったりしねーよ」


以上、確認と認識の擦り合わせ終了。


三人が三人納得し、思い出したようにカップに口を付ける。落ち着くとまた新たな疑問が浮かんできて、千春は太陽に問い掛けた。


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